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X線による銀河団観測



銀河団は、数〜数十Mpcの領域に百個から数千個の銀河が集まってできている 銀河の集団である。重力的に束縛された系をなし、重力ポテンシアルの中を銀 河団を構成する銀河が運動している。その運動と個々の銀河の質量から、この ポテンシアルを作っている質量、いわゆるVirial Massがこの系の中にあるべ き総質量を与える。この値は一般に、構成銀河として見えている銀河の質量を 足し合わせた約10倍になる。すなわちどこかに見失っている質量があると言う、 Missing Mass Problemを提起している。一方X線でこの銀河を見ると、個々の 銀河からのX線以外に、銀河団全体に広がったX線輻射が見られる。この輻射 は1000万度の高温のプラズマからの熱放射であることが知られ、そのガスの質 量は先程の見えている銀河の質量と同程度である。依然として、Missing Mass は説明できないでいる。この問題の重要性は、宇宙が膨張しつづけるかどうか を決める臨界密度(Critical Density)の見積に大きく寄与するからである。銀 河団を満たす高温ガスはガスに含まれる元素に特有の特性X線を放出し、その 元素の存在量、励起状態などを探る手掛かりを与えてくれる。この元素の存在 量を赤方偏移に沿って過去へ遡ることで、宇宙の元素の進化と、銀河団自身の 進化をたどることができる。また宇宙論的には、一様等方な初期宇宙から、何 時ゆらぎによるClusteringが始まって銀河団が形成されたか、星ー銀河ー銀河 団のどれから先に形成されたかを知る手掛かりが得られる可能性がある。一方、 近傍の銀河団では、銀河団内部のX線の強度とスペクトルの場所による違いか ら、高温ガスの温度、密度、元素比の分布を求めることができる。銀河団を構 成する銀河はポテンシアルの中で比較的中央に集中しており、ガスが銀河から 放出されたものとするならば、重元素も銀河同様中心に集中した分布をするは ずで、このことから、このガスの起源が銀河によるものかどうか決められると 思われる。もし銀河とは異なり、銀河団に一様に存在しているとすれば、この ガスが銀河団形成時に持ち込まれ、元素もそれまでに作られた元素比を保存し ている事になる。すると、現在既にこの高温ガスから観測されている鉄輝線を 放出する鉄元素はすでに銀河団形成以前に何らかのプロセスで合成されていな ければならず、先ほどの宇宙の進化の考えを決める重要な決め手になる。こう した銀河団の高温ガスの熱放射ではなく、銀河団の向こう側の宇宙のはてから 来る3度K宇宙背景放射が、この高温ガスに散乱され、短波長側へ波長がシフ トする現象がはSunyaev-Zeldovich効果として知られている。電波領域のスペ クトル変形の量は電波の観測波長、高温ガスの温度と、通過する銀河団のサイ ズで決まる。銀河団のサイズは銀河団までの距離と見込む立体角で決まるため、 電波とX線の観測結果を結び付けると、距離の指標が得られ、これまでと独立 にハッブル定数が決められる。いまのところ、50 km/sあたりからやや小さめ に出ることが多い。この様に銀河団のX線観測は、分光観測で輝線を、撮像観 測で分布を、高感度観測で時間的進化を探る上で、極めて有力な手段であるこ とが分かる。このX線観測を手段として、銀河団の構造と進化を、更には銀河 団をプローブに宇宙の構造と進化を研究したい。