名古屋大学U研X線グループ
名古屋大学大学院理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻 宇宙物理学研究室
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あすかによるおとめ座銀河団(M87)とペルセウス座銀河団の解析
― 銀河団からの輝線における共鳴散乱の効果 ―

秋元 文江

Abstract

銀河の集まりである銀河団は、重力的に束縛された最大の階層であり、X線領域で最 も効率よく放射を行う高温希薄なプラズマで満たされている。このプラズマからの放射 をX線領域で観測することにより、プラズマの温度、密度、重元素組成比とその空間分 布を探ることができる。そして、これらの物理量は、暗黒物質の振る舞いや、重元素の 起源、更には銀河団の進化過程を解明する手掛かりになる。

今回、空間分解能3'、視野30'φを持つX線天文衛星ASCAにより0.5keVから10keVのエ ネルギー帯で、銀河系近傍にある、M87(乙女座銀河団) (15.6Mpc @H0=75)、ペルセウス 座銀河団(73.2Mpc@H0=75)の中心を観測した。そして、それぞれ15ksecの観測データか ら、温度、重元素組成比、表面輝度などの動径方向の分布を求めた。 M87(乙女座銀河団)についてスペクトル解析した結果から、空間的に温度は一定では なく、中心部は低温(1.8keV)で外側に向かって高温(2.7keV)になる傾向が分かった。重元 素組成比も30'φの視野角全体では0.5となるが、空間的には中心から外側に向かって0.7 から0.3と減少することが分かった。更に、高階電離したHe-likeの鉄のKα線の鉄のKβ 線とニッケルのKα線を混合した輝線に対する強度比を調べた結果、30'φの視野角全体 でのこの比の値が、プラズマが輝線に対して光学的に薄いとした場合の値に比べ小さい ことが分かった。その上、この値が空間的には中心から外側に向かって増加している傾 向があることも明らかになった。これらは、鉄のKα線が共鳴散乱を受ける効果を考慮 にいれる必要性を示唆している。 また、ペルセウス座銀河団についてスペクトル解析した結果、中心部は低温(4keV)で 外側に向かって高温(7keV)になり、重元素組成比は中心から外側に向かって0.5から0.4 と減少することが分かった。従って、空間的な温度と重元素組成比の分布の傾向がM87 と一致することが分かった。更に、He-likeの鉄のKα線のKβ線(ニッケルのKα線を含 む)に対する強度比も、M87と同様に鉄のKα線が共鳴散乱を受ける効果を考慮にいれる 必要性を示唆する結果が得られた。

 
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