名古屋大学U研X線グループ
名古屋大学大学院理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻 宇宙物理学研究室
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多層膜回折格子とCCDによる高効率高分散X線分光の研究

吉岡 努

Abstract

鉄K輝線の波長分解能 λ>1000 での 高分散分光観測が強く望まれて久しい。 しかし、可視光では当り前になっているような高分散の分光観測を、 6〜7keV付近にある高いエネルギーを持った鉄K輝線で行うのは、 技術的に不可能であった。 X線は可視光に比べ波長が短くエネルギーが高いため、 十分な光学系の効率を得られなかったことがその理由である。
そこで本研究では、 高エネルギーX線(2keV以上)でも高い反射率を得ることのできる多層膜を、 回折格子の表面に蒸着させた多層膜回折格子 (Multilayer Grating : MLG) を製作し、これと検出器に高い位置分解能をもったX線用CCDカメラを 組み合わせることにより、 高い効率と波長分解能を持った分光システムを構築した。 まず、X線CCDカメラシステムの較正を行い、 これを使って製作した多層膜回折格子の評価を行った。
CCDの較正は2システム行った。1台目は、浜松ホトニクス社製有 効面積1/2インチ角の前面照射型素子を使ったカメラシステムであ る。このシステムは現在、日本の次期X線天文衛星 ASTRO-E のX線 望遠鏡の評価に使われている。2台目は、CCD素子にSITe社製有効面 積1インチ角の背面照射型素子を使ったカメラシステムである。 これらのカメラシステムは、バイアスレベルの補正などを行い、 ゼロレベルの揺らぎを抑え、検出限界強度の低減を図った。 以下の多層膜回折格子の評価には、この2台目のシステムを用いた。
本研究で使用した回折格子は、島津製作所製の刻線数500、1200本 のラミナー型回折格子である。その表面にPt/C、膜厚 d〜50Åの多層膜を当研究室のDCスパッタ装置により成膜し た。評価には、銅のKα線(λ=1.54Å)とアルミのK線 (λ=8.34Å)を用いた。回折条件は、入射角を θ_0、多層膜回折格子面からの角度をθ、格子間隔を Dとるすと、 D(cos θ_0 - cos θ)=pλ (p=0, ±1, ±2, ...)と、多層膜のBragg 条件は d(sin θ_0 + sin θ)=mλ (m=1, 2, ...)と書ける。この2つの条件を同時 に満たす場合を高い回折効率を得ることができ、 この条件を多層膜回折条件 (MLG condition)と呼ぶことにする。 実際の測定結果として、銅のKα線を入射角 θ_0=1.28°で、刻線数1200本の多層膜回折格子に入射させ ると、θ=0.66°に-1次光が検出された。このとき、-1 次の回折条件と、+1次の多層膜のBragg条件が満たされ、22.5%と いう非常に高い回折効率が得られた。一方、入射角を小さくしてい くと、今度は+1次の回折光が+1次の多層膜のBragg条件と重なり合 う。入射角θ_0=0.66°、出射角θ=1.27°の時、+1次 光を回折効率20.1%で検出できた。 従来の表面が金の回折格子では、高エネルギーX線の回折効率は 1%未満(測定不可能)であったが、 多層膜回折格子を用いることによって、 実用的な回折効率を得ることが可能となった。
また本論文では、多層膜回折格子の応答関数の元となる、 多層膜回折格子ダイアグラム (MLG diagram)と、 またそこに回折光強度をプロットした 多層膜回折格子回折強度分布図 (MLG Intensity Map)を考案したことにより、 詳しく回折像を説明することができるようになった。

 
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