名古屋大学U研X線グループ
名古屋大学大学院理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻 宇宙物理学研究室
〒464-8602  名古屋市千種区不老町 Tel:052-789-2921 Fax:052-789-2919
 
Home Uir Site map English
ヘッダー
研究室紹介 研究プロジェクト 研究概要 研究成果 アクセスマップ お問い合わせ 関連リンク
研究成果
論文
論文リストEnglish
1990~1999
論文リストEnglish
2000~
論文リスト
博士論文リスト
修士論文リスト
新聞記事
 
publication
多層膜スーパーミラーの高性能化と気球搭載用硬X線望遠鏡の開発

岡島 崇

Abstract

多層膜スーパーミラーとは, 重元素と軽元素の膜厚(数10Å)を表面 から基板方向に向けて減少させながら, 交互に積層 することによって周期構造を作り出した光学素子である。これによっ て, X線領域の広いエネルギー範囲でブラッグ反射により高い反射 率を得ることができる。本研究では, 多層膜スーパーミラーをX線 望遠鏡に応用し, これまで不可能であった10 keV以上の硬X線の集 光・結像を目指した試作モデルの開発を行い, 硬X線望遠鏡の完成 に向けて設計パラメータの検討を行った。また, 多層膜スーパーミ ラーの実用限界を調べるとともに, 新たなる設計方法の研究を行っ た。

気球搭載用硬X線望遠鏡は, ゴンドラの大きさなどから, 焦点距離8 m, 口径40 cmで設計を行っている。この設計では, 反射鏡に対する X線の入射角は0.1°- 0.35°となる。まず, 多層膜スーパーミラーを入射角0.3°で最適設計を行った。 この設計は, 周期長の異なる3種類の多層膜を組み合わせた3block スーパーミラー(26層)で25 - 36 keVに, 4block(44層)で25 - 38 keV , 5block(69層)で25 - 40 keVに40%(理論値)の反射率を持つ。そ こで, 3block スーパーミラーを大型レプリカ基板 (100×150 mm)全体に均一に成膜を行った。このときピーク 反射率20 - 30%, 周期長の設計値との差1Å以下, 周期長の 再現性±0.5Å, 光軸方向の周期長の均一性1%(幅50mm以内) であった。さらに, 2%以内の再現性で10組20枚の3blockスーパー ミラーを製作し, 望遠鏡として組み上げ結像実験を行い, 25 - 36 keVでの集光結像に成功した。

以上の成果を踏まえて, 25 - 40 keVで大有効面積を目指した, 気 球搭載用硬X線望遠鏡の設計を行った。望遠鏡には有効面積を大き くするために, 曲率半径の異なる256枚の反射鏡を同心円上に組み 合わせる。このため, 反射鏡それぞれに対する入射角は全て異なる。 つまり, 反射鏡それぞれで多層膜の最適設計を行う必要がある。そ こで, 256枚の反射鏡を13グループに分け, グループごとに最適設 計を行った。この設計によって, 完成予定の硬X線望遠鏡は, 25 - 40 keVで150 cm2(理論値)の有効面積を持つ。そこで, 13グルー プに分けた反射鏡をそれぞれ1枚づつ製作し評価を行った。これに より, 25 - 40 keVで平均70 cm2の有効面積を持つ望遠鏡が完成する 予定である。この値は, 基板自体の粗さの問題や, 成膜時の熱の問 題などのため, 小さな値となっている。この硬X線 望遠鏡を用いれば, 25 - 40 keV というエネルギー領域で, 従来 の検出器のみの場合に比べ約100倍以上のS/Nで観測をする事ができ る。

また, 系統的に多層膜の周期長を小さくしていき, 実用に耐えうる 限界を調べ, 40 keV以上への高性能化を行った。この結果, DCスパッ タリング装置による周期長の最小値は20 Åで, 1次ピー クを利用した場合, 入射角0.3°で60 keVが限界である。従 来の設計方法とは異なり, 多層膜の高次のブラッグピークを重ねる ような設計, 製作も行った。これは, 望遠鏡よりもむしろ多層膜回 折格子など他の光学素子への応用が期待される。

 
Copyright (c) 2008 Nagoya University . All Rights Reserved.  
 
トップページに戻る