名古屋大学U研X線グループ
名古屋大学大学院理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻 宇宙物理学研究室
〒464-8602  名古屋市千種区不老町 Tel:052-789-2921 Fax:052-789-2919
 
Home Uir Site map English
ヘッダー
研究室紹介 研究プロジェクト 研究概要 研究成果 アクセスマップ お問い合わせ 関連リンク
研究成果
論文
論文リストEnglish
1990~1999
論文リストEnglish
2000~
論文リスト
博士論文リスト
修士論文リスト
新聞記事
 
publication
銀河面方向に位置する3C 129銀河団のX線観測
― 銀河団ガス中に存在する電波源からの非熱的放射の検出 ―

和田 恵一

Abstract

3C 129銀河団は近傍(z=0.022)に位置するためX線で明るく、比較的高温の銀河団で ある。低い銀緯(l=160.5°、b=0.3°)に位置し、強い星間吸収を受 けるため、可視光や 3 keV以下の軟X線領域での観測が困難であり、この銀河団の性 質を知るうえで吸収の影響の少ない3 keV以上のX線領域での観測が重要となる。 また、Head Tail 電波銀河である3C 129が銀河団中心から西へ約8分角(〜300 kpc)の場所に位置し ており、X線と電波の観測を合わせることで、銀河団ガスの熱的電子と電波ジェット に含まれる非熱的電子と磁場の圧力バランスの解明が期待できる。

本研究では、ASCA衛星によって 10 keVまで観測されたX線データを用いて解析を 行なった。 星間吸収については、3C 129銀河団の領域における水素柱密度nHの平均が 7.3+0.3-0.2 × 1021 cm-2であるのに対し、中心から東側の領域 では 8.6+0.8-1.0 × 1021 cm-2という大きな値が得られ、星間物 質に10 pc程度のスケールで非一様な分布が存在することが示唆された。 星間吸収を考慮した2-10 keVのX線光度 LXは2.1 × 1044 ergs s-1であった。 銀河団ガスの空間構造を得るために、温度と重元素組成比の二次元分布を求めた。 その結果、温度は平均値6.2+0.3-0.2 keVに対して、4-8 keV程度の温度差 で非一様に分布していることが示唆された。一方、重元素組成比にも非等方的な分布 が見られ、領域によって0.35 ± 0.06 solarと0.20+0.07-0.08 solarとい う有意な差が存在するすることがわかった。これらの解析結果は、X線表面輝度分布が 球対称分布ではなく、楕円状の構造を持つことに加え、この銀河団が過去の進化過程 において衝突・合体を起こした可能性を示唆するものである。また、衝突からの経過 時間は1 Gyrから4 Gyr程度であると予想される。

電波銀河3C 129に注目して行なった解析では、電波ジェットの周辺で、 逆コンプトン散乱によって生じたと考えられるX線の超過が存在することを発見した。 さらに、優れた角度分解能を持つChandra衛星のデータ解析からも同様の結果を得 た。この超過成分を、シンクロトロン放射を出す非熱的電子による マイクロ波背景放射の逆コンプトン散乱であると仮定すると、電子のエネルギー密度 ueは 8 × 10-12 ergs cm-3で周囲の銀河団ガスの圧力とほぼ 等しく、一方で磁場のエネルギー密度uBは 4 × 10-16 ergs cm-3 と非常に小さな値が得られた。つまり、電子と磁場の間のエネルギー等分配は成立し ておらず、周囲の銀河団ガスと非熱的電子の間で圧力平衡が成り立っていることを 意味する。この結果、銀河団に内包された電波源の形状が、周囲の銀河団ガスに強く 影響を受けていることがX線観測から明らかになった。

 
Copyright (c) 2008 Nagoya University . All Rights Reserved.  
 
トップページに戻る