Uxgグループ 重力波研究チーム
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重力波検出器Advanced LIGOに関する実験



Advanced LIGOによる重力波検出

Advanced LIGOは18か国、100以上の機関から構成されたThe LIGO Scientific Collaboration (LSC)が運用する国際的な重力波検出器です。アメリカのワシントン州ハンフォードとルイジアナ州リビングストンにそれぞれ4 kmのアーム長を持つ大型のレーザー干渉計が設置されています。2017年のノーベル賞受賞のきっかけとなった重力波の初検出が行われたのもこの検出器です。また、初検出以来、干渉計のアップグレードを重ね、現在までに100を超える重力波イベントが検出されています。

しかしながら、もし重力波検出器の感度を10倍向上させることができれば、1000 (=103) 倍の重力波イベントをとらえることが可能となります。したがって、今後の重力波天文学の発展には検出器の感度向上が重要となっています。

期待されるサイエンス

地上型レーザー干渉計型重力波検出器において、観測対象となる主な現象は、コンパクト連星合体から発生する重力波です。このような合体現象は非常に遠い宇宙で起こるため、非常に微弱な信号として地球に届きますが、10倍以上の感度の向上により、これまで観測できなかったさまざまな科学的発見が可能になります。、感度向上によって解明が期待されている代表的な科学的成果を、以下の通りいくつか紹介します。

  • ブラックホールの合体率と恒星の形成率の時間進化の解明
  • 銀河の進化過程の解明
  • 中性子星の状態方程式及び、超高密度下における物体の物理の解明
  • 超巨大星のコアの崩壊や宇宙初期に形成された原始ブラックホールなどの新たな重力波源の発見

  • 本学での研究

    Uxg研重力波グループでは、Advanced LIGOに関する研究を理論と実験の双方から幅広く幅広く行っています。研究の主な目的は、重力波検出器の感度向上です。グループ内で進行中の主要な研究活動は以下の通りです。

    *熱相互作用の解析

    レーザー干渉計型重力波干渉計は重力波の効果をより大きく捉えるために、非常に強力なレーザーを使用します。例えば、Advanced LIGOの腕共振器におけるレーザーの循環パワーはおよそ300 kWです。この非常に強力なレーザーパワーが干渉計を構成する光学素子に悪影響を及ぼします。

    特に顕著な問題が、熱吸収に伴うTest Massの温度勾配によって局所的な屈折率の変化が生じる点です。局所的な屈折率の変化は、近似的に追加のレンズが置かれていると見做せます(熱レンズ効果)。また、この効果は共振器の共振条件を変化させ、循環するレーザーパワーを大きく失わせます。重力波検出器は非常に微弱な変位を捉える必要があるため、この熱レンズ効果によるパワーの低減が感度を制限する要因となっています。

    そこで、私たちは現在、熱効果を含めた干渉計光学の解析に力を入れて取り組んでいます。加えて、2027年から予定されている次回のオブザベーションランでinput powerの向上を行うためにも、解析による結果をもとに新たな制御法を開発する予定です。また、Cosmic ExplorerやEinstein Telescopeといった次世代の重力波検出器の実現を支える技術になり得ると考えています。

    レーザー干渉計型重力波検出器
    熱レンズ効果

    Link

  • LIGO Scientific Collaboration: 公式ホームページ
  • LIGO Caltech Website