ジャグリング・ジグリング重力波干渉計の開発
ジャグリング干渉計、ジグリング干渉計とは?
ジャグリング干渉計、ジグリング干渉計干渉計とは、周期的な投げ上げにより鏡を自由落下状態にすることで、地面振動や懸架系の雑音を完全に除去し、低周波での感度を飛躍的に向上させることのできる検出器です。
地上検出器で低周波雑音を低減する
LIGOやKAGRAなどの地上のレーザー干渉計型重力波検出器では、防振のため鏡は懸架されています(図1)。この防振の基本原理は振り子によるもので、振り子の共振周波数よりの十分高い周波数で地面振動の影響を抑えることができますが、その防振効果は数Hz以上の周波数に限られています。これは次世代の地上重力波検出器でも感度向上の妨げとなっており、低周波であるほど重力波信号が大きくなるという低周波観測のメリットを踏まえる(図2)と、重力波検出器において地面振動などの低周波で支配的な雑音を低減する方法を開発することは非常に重要です。DECIGOやLISAのような宇宙検出器では、ミラーが自由落下状態にあるため懸架系が不要となり、地面振動や懸架系の雑音を完全に除去することができますが、宇宙検出器には開発コストや技術的な課題なども多くあります。これらのことから地上検出器での低周波雑音を低減する手法の開発は必要とされています。
本学での研究
本研究では、干渉計の鏡を短周期で自由落下させることで懸架系を取り除き、地面振動雑音と懸架系の熱雑音を完全に除去するという、世界的に見ても類を見ない独創的な方法の開発に取り組んでいます。
ジャグリング干渉計
ジャグリング干渉計は、自由落下の周期が1秒程度となっており、投げ上げ距離にすると1m程度となります。設計としては図3に示すように各鏡とビームスプリッターをそれぞれの真空槽に入れ、投げ上げ中にマイケルソン干渉計を運用します。現在我々の研究室で行っている実験系では、投げ上げ動作の上下運動はリニアステージによって行われており、干渉計の構成要素を入れた真空槽をステージに搭載しています。動画に示すように1枚の鏡において自由落下状態の実現には既に成功していますが、投げ上げ中の鏡の傾きは未だ干渉計の要求値を満たしていません。そのため、現在は投げ上げ中の鏡の傾きを抑えるために、投げ上げ動作の制御手法や投げ上げ機構の高精度化を行っています。
ジャグリング干渉計の投げ上げテスト動画 鏡単体の場合
ジグリング干渉計
ジグリング干渉計は、鏡を自由落下させてマイケルソン干渉計を組むというジャグリング干渉計と同じ特色を兼ね備えた上で、投げ上げの周期を短くした周期的無重力干渉計です(図4)。自由落下の周期が数十ミリ秒となっており、投げ上げ距離にすると1mm程度となります。投げ上げ周期を短くするメリットは、リニアステージなどの大型な投げ上げ機構やレーザー光を追従させるための光ファイバーが不要となることや、投げ上げ中の角度変化が小さくできるなどがあります。現在は、ジャグリング干渉計と同様に投げ上げ中の鏡の傾きを抑えるためのアクチュエーターの制御方法の開発などを行っているほか、短い投げ上げ時間で得られる不連続なデータを扱うためのデータ解析手法の開発も行っています(図5)。
図5.ジグリング干渉計を真空槽内に入れた様子
このように本研究では、ジャグリング・ジグリング干渉計の装置開発を通じて、低周波で支配的な雑音を完全に除去する方法の開発に取り組んでいます。これが実現すれば、実験室のテーブルトップ実験でありながら1Hz以下での世界最高感度が達成できる見込みです。
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