宇宙重力波望遠鏡DECIGO(量子ロッキング)
に関する実験
研究概要
量子ロッキングは,宇宙重力波望遠鏡DECIGOで感度を向上できると提案されたアイデアです.
このアイデアがもつ更なる可能性を理論的に追求したり,
アイデアが実現可能であることを実験的に確かめたりしています.
宇宙重力波望遠鏡 DECIGO とは?
宇宙重力波望遠鏡DECIGO(DECi-hertz Interferometer Gravitational Observatory)は,
日本が主導して進めている将来の重力波観測プロジェクトです.
宇宙からやってくる重力波を,宇宙に浮かべた検出器で捉えよう!
という計画です.東京大学をはじめ,多くの大学が参加し,
DECIGO実現に向けた研究を行っています.
DECIGOの目標は?
DECIGOが最も検出を目指している重力波は「原始重力波」と呼ばれるものです.
原始重力波は宇宙が誕生したときに生成したとされる重力波です.
これを検出し解析することが,宇宙がどうやって誕生したのか?
という宇宙の大きな謎を解く鍵とされています.
他にもDECIGOには,宇宙の膨張加速度を重力波で調べることでダークエネルギーの解明をしたり,
巨大ブラックホールの合体からくる重力波を調べて巨大ブラックホール形成の謎を解明したりする目的もあります.
DECIGO実現の要は?
DECIGOを実現する上で最も重要なことの1つが,感度を向上することです.
原始重力波によって物が揺れる大きさは,0.1 Hzでおよそ10^-17 m ほどと言われ,
検出するには他のあらゆる雑音を極限まで減らす必要があります.数ある雑音の中でも,
最終ボスとして立ちはだかるのが,レーザー自体がもつ雑音,量子雑音です.
レーザー光のパワーと位相が量子力学の不確定性原理で揺らぐことからくる雑音です.
この雑音を低減し,原始重力波に対する感度を可能な限り高めることが重要です.
どうやって感度を向上するの?
量子ロッキングという方法が,感度向上の最有力候補です.
複数の場所で量子雑音を同時に測定し信号をうまく組み合わせる方法,
ホモダイン検波と呼ばれる光の検出方法,光を使って鏡がまるでバネに
繋がれたかのようにする方法,これらの方法を合わせることで,
分が特に感度を良くしたいと思う周波数で飛躍的に感度を良くすることができます.
具体的にはどんなことをしているの?
Uxg研重力波グループでは,量子ロッキングを使った感度向上技術を理論と実験の両面から研究しています.
理論研究では,量子ロッキング理論を改良してさらに良い感度が得られないかを調べたり,
より現実的な状況を仮想的に作ってどれだけ威力を発揮できるかを調べたりしています.
これらは理論的な計算をした上で,
ソフトウェアを使ったシミュレーションをして研究しています.
実験では,これまでに提案された量子ロッキング理論が
現実のものとして使えることを原理検証しています.
加えて,その過程での問題点を洗い出し,
DECIGOを実現する際に考えられる障壁への対処法を確立しておく狙いもあります.
実験に必要な光学系,懸架系,制御系,真空系などを
専門の方々と協力しながらデザインし,構築しています.
量子ロッキング実験の光学系(写真:石川)
量子ロッキング実験の懸架系(写真:石川)
量子ロッキング実験制御と信号取得のためのFPGA(写真:石川)
最後に: 所属したらこんな感じで研究します
先述の通り,量子ロッキングに関する理論,実験の研究を広く行えます.
どちらかに集中して行うことも可能ですし,二足のわらじで両方行うことも可能です.
自分が思いついたアイデアを盛り込んで,先生と相談しながら研究を独自に発展させることもできます.
「感度を良くしたい」という目標へのアプローチは様々で,
量子ロッキングはその1つにすぎません.自由な発想で研究に取り組みたい人におすすめです.
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