名古屋大学U研X線グループ
名古屋大学大学院理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻 宇宙物理学研究室
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第1回:2001.7.6
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第2回:2004.5.31
第3回:2004.9.16
 
研究概要
硬X線とその観測意義
 実は硬X線を科学的に厳密に定義することは難しいのですが、一般的にはX線と 言われる電磁波の中でも、エネルギーが比較的高い(波長が短い)もののことを 指します。エネルギーで言うと、約10keV以上(波長で言うと0.12nm以下)のX線 を指します。  X線を発する天体の種類は多岐に及びますが、その発生原理は大きく2つに分類することができます。つまりは、X線を放射する電子が熱的な運動を行っているものとそうではないものです。熱的な放射というのは、1千万度以上の 超高温の天体が発生するもので、電子の運動はマックスウェルーボルツマン分 布によって記述されます。宇宙で主に熱的な放射を発する天体は銀河団や超新 星残骸と言った、広域に広がった高温ガス天体で、これらの温度は大体十数ke V以下です。そのため、熱 的なX線の放射も大部分が10keV以下になっています。一方、非熱的なX線放射を出 すには、熱以外の電子の加速のためのメカニズムが必要で、大抵は途方もなく大きな重力や磁場を持つ中性子星やブラックホールなどの小さな天体(これら を縮退星とよびます。)であるこ とが多いです。非熱的な放射を出すような電子は巾級数関数で表されるような分布 を持つことが多く、高いエネルギーまでエネルギーの分布が延びているのが特徴です。

上記のように、熱的な放射は硬X線領域まで出てこないために、硬X線での観測 は主に非熱的な輻射をみることになります。その観測の意義としては、1つには、集光、結像することによって、観測の感度を大きく上げられることにあり ます。たとえば、活動銀河核の一種である2型セイファー ト銀河は非常にエネルギーの高い硬X線を放射しますが、同時に極めて暗 い天体でもあります。そのために、結像系を持たない観測器では、同時に視野 に入ってしまう背景放射が邪魔になって発見しにくく、また硬X線に感度のな い望遠鏡でも発見が難しくなってしまいます。そのため、硬X線で結像できる 望遠鏡があれば、未発見の天体が続々と観測される可能性もあるわけです。
もう一つの意義として、広がった硬X線天体の観測があげられます。上にも述 べたように、これまで非熱的なX線を放射する天体はほとんどの場合、縮退星 であると考えられてきました。しかしながら、最近の 「あすか」の結果から、銀河団や超新星残骸といった天体に非熱的な成分 があるらしきことが報告され始めました。これらの放射の起源を知るにはその 形状を知るのが一番です。銀河団の研究ではその非熱的な成分が、銀河団に含 まれる活動銀河核によるものか、実際に広がった成分が存在するのかで議論が 交わされていますが、これは結像することによって簡単に知ることができます。

それでは、これほど意義のある硬X線領域での結像観測は何故行われてこなかったのでしょうか?その原因は、硬X線領域で反射率を持つような鏡がなかったことにあります。一般的に、X線はエネルギーの高い方が透過力が強く、物質の 奥深くまで入り込んでいく性質があります。そのために、全反射を用いた現在 のX線望遠鏡では、高いエネルギーの硬X線は極めて反射しにくくなってしまい ます。
このような高いエネルギーのX線を反射させる方法として、Bragg反射がありま す。結晶のように周期的な構造をもつ物質中にX線が入射すると、特定の角度 で干渉が起こりX線は反射されます。我々はこの原理を利用して、硬X線領域で も反射率を持つ反射鏡の開発を行いました。
 
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