2025/3/18:金沢市で観測された、珍しい雷放電突発ガンマ線TGFの観測結果をまとめた論文がJGR-Atmospheres誌に掲載されました。"An Upward Multi-Pulse TGF Involved With Two Thunderstorm Cells" です。2021/12/30に観測されたこのTGFは、放電の向きからして宇宙向きTGFであり、地上向きに加速された陽電子(電子の反物質)からの制動放射であると解釈できる初のデータであること、数ms間隔5連発で放射されるやや珍しい multi pulse TGFであったこと、そしてTGFが発生した雷雲は、同時に放電していた雷雲から3-5 km 離れておりその雷雲では突然TGFが発生したように見えることなど、観測的に多くの新発見がありました。
2025/2/12:XRISM衛星で近傍の中規模銀河団「ケンタウルス座銀河団」の中心部を観測した結果、銀河団高温ガスが中心銀河に対して視線方向に100-300 km/sという速い速度で動いていることを発見した成果がNature誌に掲載されました。"The bulk motion of gas in the core of the Centaurus galaxy cluster" です。これまで中心の巨大ブラックホールが高温ガスを押しのけたりしている描像で解釈されていたものが、実は過去の銀河団衝突で重力ポテンシャルが揺らされる「スロッシング」現象を起こしており、ブラックホールよりも遥かに大きな影響を与えていることを発見しました。
2024/9/13:当研究室のD2学生大宮君が主著となり、近傍の代表的な衝突銀河団 Abell 3667 をX線天文衛星 XMM-Newton が観測したデータを詳細に追解析することで、正面衝突ではなくわずかにオフセットして衝突しており、今その中心部は回転していると考えられるという解析結果をまとめた論文がAstronomy and Astrophysics に掲載されました。"Indications of an offset merger in Abell 3667" です。これは今後のXRISM衛星の観測に繋がり、さらにはAbell 3667の衝突描像を確立してそこで起きている加熱と粒子加速が、どこで、どのように起きているかを探る上で重要な発見です。
2021/10/19:アメリカのMeV観測衛星計画 COSI が最終セレクションを通過し、2025年の打ち上げを目指した開発が始まりました。COSIは、NASAの小型科学衛星SMEX計画の最新の仲間です。Ge半導体を用いたコンプトン望遠鏡であり、我々の銀河系に広がる星々や星間空間からやってくる重元素のガンマ線輝線を最高精度で観測します。また、サブ検出器を用いた雷ガンマ線TGF観測も実施します。日本からは中澤と東京大学KavliIPMUの高橋らが参加しており、名大はサブ検出器の開発サポート、雷ガンマ線の観測研究のリードを担当し、MeV観測の解析にも参加します。 詳細は COSI webpageをご覧ください。