名古屋大学U研X線グループ
名古屋大学大学院理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻 宇宙物理学研究室
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研究概要
X線天文衛星あすか
ASCA

 「あすか」はわが国4番目のX線天文衛星として 1993年2月に鹿児島県内之浦町の文部省宇宙科学研究所鹿児島宇宙空間観測所(KSC)より打ち上げられま した。

「あすか」は日本では初めてX線望遠鏡 を搭載した衛星です(太陽観測衛星を除く)。この 「あすか」搭載X線望遠鏡は多重薄板X 線望遠鏡と呼ばれるもので、厚み 0.125mmの反射鏡を120枚同心円状に並べた構造を持っており、軽量、かつ集光 面積が大きいという、日本の衛星によくマッチした望遠鏡です。「あすか」に はこの望遠鏡が4台搭載されており、その焦点面には位置検出型ガス蛍光比例計数管(GIS)X線CCDカメラ (SIS)が各2台ずつ設置されています。「あすか」は、これまでのX線天文 衛星では不可能であった4keV以上のX線撮像分光観測を可能にした世界的にも 非常に画期的な衛星で、世界中の研究者に利用され、多大な成果をあげています。

名古屋大学U研は、NASAゴダード宇宙飛行センター、宇宙科学研究所 とともに「あすか」衛星のX線望遠鏡の開発、性能評価実験を行ってきました。

「あすか」搭載X線望遠鏡 (ASCA XRT)

 「あすか」搭載X線望遠鏡は、名古屋大学 U研、NASAゴダード宇 宙飛行センター、宇宙科学研究所によって共同で開発された多重薄板X線望遠鏡です。

過去の衛星搭載X線望遠鏡は主に研磨型と呼ばれるものでした。熱変形しない厚いガラス円筒の内面を、切削によって回転二次曲面(回転放物面、回転双曲面) にし、さらに研磨することによって非常に滑らかな表面を作ります。 この表面にはX線反射率の高い金などの膜が成膜されます。この方式は非常に高い形状精度を実現でき、角度分解能に優れた望遠鏡を作ることができます。 反面、厚いガラスを用いるため重量が重くなる、ガラス円筒の端面(X線の集光 に寄与しない)の占める面積が集光面積に比べて大きい、という問題がありま す。

「あすか」搭載X線望遠鏡には、反射鏡としてアクリルコートしたアルミフォイルの表面に金を蒸着したものを使用ています。この反射鏡の形状は円錐型 の母型にアルミフォイルを巻き付け、恒温槽で円錐形に熱成形することによっ て作られています。しかし、そのままでは表面が非常に粗いためX線の反射鏡 としては使えません。そこで、成形したアルミフォイルの表面をアクリルでコー トすることにより、X線反射鏡に要求される滑らかな表面を実現しています。 こうして滑らかにされた表面に金を蒸着してX線反射鏡が出来上がります。 望遠鏡の上部と下部には反射鏡を固定する溝が刻まれたアライメントバー が放射状に配置されており、この溝に沿って約1mmピッチで120 枚の反射鏡が 同心円状に配置されています。このように、薄い鏡を密に並べることによって反射鏡の端面の占める面積が小さく非常に高い開口効率を達成しています。

望遠鏡は衛星先端部に位置するため、熱源となる機器から離れており、望 遠鏡の温度環境は非常に厳しくなっています。望遠鏡の温度が他の機器よりも 低くなると、他の機器からの揮発物質が鏡面に吸着されたり、望遠鏡内に温度 分布が生じて反射鏡の形状が歪み、結像性能の悪化を引き起こす可能性があり ます。そこで、望遠鏡を宇宙空間から熱的に切り離すために、望遠鏡の入射口 部にはサーマルシールドと呼ばれる薄いフィルムがつけられています。このサー マルシールドには TORAY によって開発された厚み0.3ミクロンという世界最薄 (当時)の PET フィルムが使用されています (ペットボトルと同じ材料です)。

X線望遠鏡の正面図 横から見た断面 X線望遠鏡の正面図 横から見た断面
研磨型 多重薄板型(10層)
研磨型
(黄色い部分が有効面、灰色、白の部分は集光しない
多重薄板型(10層)
 
「あすか」XRT 諸元
asca
望遠鏡外径(内径)
34 (12) cm
望遠鏡長さ 263.5 mm
望遠鏡重量 9.8 kg (1台あたり)
焦点距離 3.5 m
開口面積 558 cm-2 (1台あたり)
視野 24分角 (at 1 keV)
16分角 (at 7 keV)
X線望遠鏡 性能比較表
衛星名
打ち上げ 空間分解能 エネルギーバンド 衛星重量 望遠鏡有効面積 (@1keV)
ASCA 1993.2 180(秒角) 0.5-10(keV) 420(kg) 1500(cm^2) (4台)
ROSAT 1990.6 1 0.1-2 2400 300
Chandra 1999.7 0.5 0.2-10 4800 400
Newton 1999.12 15 0.2-12 3900 1470 (1台)
 
asca
 Cyg X-1(点源)のX線画像。 左の図は「あすか」衛星、右はROSAT衛星でとったもの。 「あすか」の方のイメージが蝶々型になっているのは 望遠鏡のハウジングが1/4ずつで構成されているため。
ASCAデータ解析にもいろいろな画像があります。
 
「あすか」搭載位置検出型ガス蛍光比例計数管 (ASCA GIS)
 GIS(Gas Imaging Spectrometer)は、東京大学、東京都立大学、宇宙科学研究 所、明星電気によって開発されました。XeガスにX線が吸収されて生じる一次 電子によってXeを励起して特定のエネルギーをもつ紫外線光子に変え、その光量と位置を検出することによって入射X線のエネルギーと位置を計測する検出 器です。比例計数管では、一次電子を強い電場で加速して電子を増幅しますが、 ガス蛍光比例計数管では電子増幅過程がないため電子数のゆらぎが小さく、比 例計数管に比べて2〜3倍のエネルギー分解能(6 keV のX線が入射した時に、X 線のエネルギー測定の不定性が 8 %)が得られます。また、GISはSIS に比べて 視野が広く(半径 30分角)、高エネルギーX 線に対する感度が高いため、大きく広がった天体や連続スペクトルの高精度観測が可能です。
将来を目ざして(NeXT衛星計画)
 我々は硬X線望遠鏡を主検出システムとして,すざく衛星の次の衛星計画としてNeXT計画(2013年打上げ目標) を提案し,気球で拓く硬X線天文学を大きく展開しようと しています(図5).焦点距離12m,口径45cmの硬X線望 遠鏡2 台を備えると同時に,軟X線で高分散分光観測を行い,ダイナミックな宇宙の姿を明らかにしようと考えています.
「あすか」搭載X線CCDカメラ(ASCA SIS)
 SIS (Solid state Imaging Spectrometer)は、マサチューセッツ工科大学、ペ ンシルベニア州立大学、大阪大学、宇宙科学研究所によって開発された、世界 で初めての直接撮像型CCDをつかってX線天体を観測する装置です。入射X 線に よって作られる電子を増幅することなく読み出すので増幅に由来するゆらぎが なく、非常に高いエネルギー分解能(6 keV のX線に対して2 %)が得られ、異なる電理状態にある同一元素からの輝線をある程度分離して観測することが可 能です。
 
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