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Clusters of Galaxies
超銀河団とは
 銀河団は、宇宙で最も大きな重力的に束縛された集合体であり、その大きさは 数Mpcに及び、可視光では銀河の密集した領域として観測される。
(かみのけ座銀河団の可視光イメージA2218銀河団の可視光イメージ )

しかし、銀河の総質量は銀河団の全質量の10分の1程度しかな く、残りは、全質量の大部分を占める暗黒物質と全質量の1〜2割程度を占める 銀河団ガスによって構成されている。
X線では銀河団内を満たす1千万度〜1億度 (数keV〜10keV)という高温で希 薄なガス(プラズマ)からの熱放射が観測され、孤立した天体として認識され る。
(A644銀河団のX線イメージ )

X線天文衛星「あすか」は0.5〜10kevのエネルギー領域で撮像スペクトル観測 が可能なX線望遠鏡を搭載し、銀河団の観測には最適である。これまでに150 個に及ぶ銀河団の画像スペクトルデータを解析し、遠方の銀河団のSunyaev-Zel'dovich効果によるハッブル定数の導出、高温ガスの質量と宇宙臨界密度パラメーターの 導出、高温ガスの温度の不均一分 布と銀河団の併合合体鉄輝線の共鳴散乱効果の検 証と重元素の存在量銀河団の系統的解析による構造と進化といった研究 がなされてきた。
銀河団が持つ、このような1千万度〜1億度という温度のプラズマガスは、X 線領域で最も明るく光っている。従って銀河団のX線観測は銀河団ガスの物理 状態、銀河団ガスの温度や密度とその空間分布、重元素量やその分布、圧力分 布などを調べる唯一の方法である。また、銀河団ガスが重力と平衡状態にある と考えられるため、その圧力分布は重力ポテンシャルの分布を反映しており、 X線による銀河団ガスの観測は暗黒物質の空間分布を知る非常に有用な方法の 一つである。 詳しくはこちらをご覧下さい。

銀河団の統計的解析
 連銀河・銀河群・銀河団の構造と進化の研究を目的とし、ASCA衛星で観測された150個の銀河団(銀河群 20%、連銀河 数%、銀河 10%を含む)を一定の手法によって解析を行った。
この結果得られた、物理パラメータ(銀河団ガスの温度: 0.7-12 keV、重元素組成比: 0.07-0.6 solar、ガス質量: 1010-15 Mo、重力質量: 1012-16 Moなど)に 文献で調べた可視光データ(速度分散、光度質量など)を加え、カタログを作成した。
このカタログを用い、様々な相関関係を調べた。 特に、低温・低光度の小さな銀河団は、一般によく知られた経験則: 光度が温度3に比例する:からはずれ、 光度から予想される温度より高い、もしく は温度から予想される光度より低い、という傾向が顕著に現われた。この原 因として、重力以外の加熱(形成の直前に吹いた超新星爆発による加熱など)に よってガスの中心集中が阻害されるという効果が考えられる。この効果は質量 の小さい、つまり低温・低光度の小さな銀河団ほど強く現れるはずであり、 (3Rc内の)全質量に対するガスの割合 fgasが、小さな系で小さな値を持っ ているという我々の観測結果からも支持される。

ASCAが観測した全銀河団
ASCAが観測した全銀河団

また、銀河から銀河団の様々な規模の系において、 ビリアル質量 M200と質量密度 δc がべき関数になっており、全ての銀河団が自己相似形になっていることを示している。 この δc が (1+形成年代 zf3に比例するとすると、銀河団の形成年代を(6〜9と)推定することができ、δcと系の大きさとの相関から、宇宙初期の密度揺らぎ(P(k)が knに比例)のべきnに制限を加える(n = -1.2 ± 0.3)事ができる。
一方、同様な性質を持つ銀河団同士のイメージやスペクトルを足し合わせる事により、 統計のよいデータを得る事ができ、詳細なイメージ解析・スペクトル解析が可能となった。
この光度 - 赤方偏移 (Lx - z) 関係に見られるように、様々な赤方偏移と、6桁という広い範囲に渡った光度 Lx を持つ様々な規模の銀河の集団のASCA観測データを解析した。
また、中心が明るく球対称な輝度分布をもつものから、明らかなコア部分を持たない不規則な輝度分布をもつものも含まれている。後者の場合は、銀河団スケールの広がったX線に加え銀河に付随した明るい点源が存在するため、中心が決定しにくいなど統一的扱いが難しく、大きなスムージングをかけるなど、特殊な解析を施している場合がある。

図中に、ASCAの検出限界を示した。

Lx vs Z
Lx vs Z

これらのデータを使い、銀河団の構造と進化を調べるために温度や質量などのパラメータ相関を調べ、かつ、 一般的性質について統計を上げて調べるために、表面輝度分布やスペクトルの足し合わせを行った。

相関

 X線スペクトルから明らかになった 光度-温度 (Lx - kT) 関係を示す。
エラーは90%の信頼度である。Lx - kT関係においては、赤方偏移が0.1以下の近傍(△)と、0.25以上の遠方(□)と、その間にあるもの(◯)の3つに分けた。 光度はガス密度、つまりガス質量の2乗に比例し、温度は銀河団のポテンシャル、つまり重力質量に比例する量である。
このLx - kT 関係は、Standard Cold Dark Matter (SCDM)モデルではベキが2となることが予想されるが、観測値としては > 3 が得られた。
これは、温度の低いポテンシャルの浅い銀河団がpreheating(銀河団が形成される直前に吹いた超新星の爆風による加熱)などの重力以外の加熱による影響を大きく受け、ガスが中心集中できず光度が下がった、かつエネルギーを得て温度が上がったとすると理解できる。このため、ガスフラクション fgas が温度の高い銀河団と低い銀河団で一定ではなく、温度の高い銀河団の方が fgas が大きくなると考えられる。今回は報告していないが、fgasのこのような傾向はASCAのデータ解析から明らかになっている。解析の結果、fgasは、温度の低い小さな系の銀河団で 〜0.02、温度の高い大きな系の銀河団で、〜0.2であった。

また、進化効果を調べるために、赤方偏移 0.1以下、0.1から0.25、0.25以上 のサンプルに分けて比較したが、有意な違いは見えなかった。 このように、赤方偏移が 0.3〜0.4 より小さいところで進化効果が見え ないというのは、低密度な宇宙(Low Ω Universe)や、high z でガスのエントロピーが大きいとする説と矛盾しない。 エントロピーについては、確かにhigh zで大きくなっている事が確認できた。
この図には、全てのタイプの銀河団についてプロットしてあるため、大きなばらつきが存在する。温度や光度は、個々の銀河団が 冷却流 Cooling Flow (CF) や 衝突合体・落ち込み merging/infall といった現象を伴っているかどうかで大きく影響を受けるからである。

Lx vs kT
Lx vs kT

Abundance - kT関係においては、光度 Lx に基づき、3つのグループに分類してある(明るい順に、×、□、◯とした)。また、重元素組成比のエラーが大きいものは除いてある。
重元素組成比は、高温の銀河団(kT > 5 keV)でほぼ一定、低温の銀河団(kT < 5 keV)でバラツキが大きいことがわかる。 低温の銀河団でばらつきが大きい原因として、 低温の銀河団は CF 現象 を伴う事が多く、CF 銀河団は重元素の中心集中の影響で重元素組成比が大きく見積もられる、ということが挙げられる。一方、元々のガスの絶対量が小さく、始源ガス primodial gas の銀河団への落ち込みの影響が大きいため、かつ/または、ポテンシャルが浅く、重元素で汚染されたガス processed gas が銀河団から流出してしまうため、重元素組成比の小さな銀河団があると考えられる。

Ab vs kT
Ab vs kT

次に、重力質量の動径分布からNavarro, Frenk & White (NFW)モデル(δc, Rs) を使い、 Characteristic Density δcとVirial Mass M200 (ρ=200ρcになる半径内の重力質量)を求め、これについて、相関をとった。ρcは、critical density (= 3H02 / 8πG)である。(下図)
このサンプルは、統計の足りないものを除いた83個のターゲットについての結果である。

M200 vs δc
M200 vs δc

この関係が、3桁に渡る質量においてべき関数になっており、これは、全ての 銀河集団が自己相似形になっていることを示している。自己相似形を仮定する と、ρc は( zf + 1)3 に比例している。従って、上 の方ほど古い系である。つまり、質量の小さな銀河の方が古く、質量の大きな 銀河団程、最近に形成されたものであることがわかる。我々のサンプルの中に 赤方偏移が形成年代と一致する銀河団が含まれているとすると、ρc / ( zf + 1)3 = 1640 ± 260となり、ρcから形成年代を (銀河:〜 14、銀河団:6〜9と)推定することができた(参考論文)。また、 SCDMモデルでは、ρcと系の大きさRsが、宇宙初期の密度揺らぎ(P(k)が knに比例)のべきnを使って、ρcが Rs-(3n+9)/(n+5) に比例すると表す事ができる。従って、ρcとRsの相関図からnに制限を加える 事ができる。M200 = 1012-15 Moの銀河団で、n = - 1.2 ± 0.3となり、M200 = 2 x 1014 - 1015 Moの銀河団で、n = -0.8 ± 0.7となった(参考論文)。

参考論文
S. Sato, F. Akimoto, A. Furuzawa, Y. Tawara, M. Watanabe, Y. Kumai,
Astrophys. J. 537, L73.(2000)
"THE OBSERVED MASS PROFILES OF DARK HALOS AND THE FORMATION EPOCH OF GALAXIES" Abstract, PDF

今後
◎ Astro-EII衛星による銀河団観測

  Astro-E衛星では、焦点面にエネルギー分解能10 eVと言う高分解能検出器 (カロリメーター)が搭載される。銀河団観測においても、鉄輝線等の輝線の 高分解能分光観測で、これまで分離して観測できなかった輝線を共鳴線 (resonance line)と衛星線(Satellite Line)に分解すること、また、10 eV即ち、600 km/sまでの運動学と、輝線のプロファイル、輝線強度比などから、 銀河間ガスの一桁詳細なプラズマ診断が可能になる。
これにより、銀河団内の詳細な温度・密度分布、運動、構造などが直接観測で きると思われる。これは観測の質的向上であり、「あすか」衛星の場合を大き く越える進歩をもたらすものと期待され、銀河団の構造と進化の解明に極めて 大きなインパクトを与える。アメリカのChandraが極めて高い空間分解能を持 つものの、数keV以下でしか高い感度をを持たないこと、ヨーロッパの XMM-Newtonが大面積は持つものの、エネルギー分解能が「あすか」衛星と同様 な120 eV(@6 keV)であることと比較してみると、ASTRO-EII衛星による観測が良 い対称をなしていて、ユニークであることが分る。
また、赤方偏移1までの銀河団の観測が可能になる。

◎ InFOCμsによる銀河団観測 ---- 銀河団の硬X線撮像観測
  硬X線望遠鏡による気球観測では、硬X線領域での銀河団の撮像スペクトル 観測を行ない、銀河団の非熱的成分の存在と銀河間磁場の理解を深めることが 目的となる。これまでに比べ、この波長域で初めて集光結像を行う ことで、3桁感度が向上して、遠方の暗い天体まで観測可能になる。また、10 keVまでは熱的成分の寄与が大きいが、それが急激に減少する20 - 40 keVを観 測することで、主に非熱的な成分の存在を明確にするのに最適である。同時に 硬X線の撮像ができることによって、これまで区別できなかった銀河団内の銀 河からの寄与を点源として認識することが可能になり、銀河団全体に広がると 予想される非熱的成分と識別して検出できる。
 硬X線望遠鏡による気球観測では、各種の天体を観測し、この波長域の最初 の高感度撮像スペクトル観測により、新たな観測の窓が開かれ、銀河団以外に も様々な階層の天体に対象が広がる可能性がある。一般に、これまでの歴史的 な発展を見れば、新たな波長域の開拓と高感度な観測は新しいカテゴリーの天 体や新しい物理現象の発見に繋がってきた。その意味でこの一連の気球観測は、 数十keVのエネルギー領域における天文学の将来、特にこの硬X線望遠鏡を主 観測装置として提案している国産次期X線天文衛星によるサイエンスの方向を 指し示すものとして極めて重要な使命を帯びていると言える。
 
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