名古屋大学U研X線グループ
名古屋大学大学院理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻 宇宙物理学研究室
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衝突・合体 / CF銀河団
銀河団の衝突合体

銀河団は数十から数千の銀河の集団である。しかし、X線による観測では単 なる銀河の集団ではなく、X線を放射する高温(数千万〜数億度)で低密度のプ ラズマ(原子から電子が剥ぎ取られてできるイオンと電子からなる気体)の塊と して観測される。このプラズマの塊は直径が1000万光年程(銀河の大きさの約 1000倍以上)もある非常に大きな天体である。 このプラズマの密度は 1 リットル あたりに粒子が 0.4〜10個で、地球の大気 (1リットルあたり約10000000000000000000000個)に比べて非常に小さいが、プ ラズマの塊の直径が 1000万光年程(銀河の大きさの約1000倍以上)もある非常 に大きな天体であるため、その質量は太陽質量の約10〜100兆倍にもなる。 しかし、この銀河団プラズマの塊の質量は、銀河団のもつ総質量の10-20% に 過ぎず、銀河団に含まれる銀河の合計質量にいたっては銀河団の総質量のほん の数%にすぎないことが分かっている。つまり、銀河団の質量の大部分は目に 見えない物質(暗黒物質、dark matter) の質量であると考えられている。X 線 観測はこの暗黒物質の量や、分布を測る非常に有力な手段である。なぜなら、 暗黒物質の作る重力とガスの圧力が釣合っていると考えられるため、ガスの圧 力(密度と温度から決まる)の空間分布が分かれば、重力の分布、つまり暗黒物 質の分布が求められるからである。

銀河団は、宇宙で最も大きな天体のひとつである。この銀河団は、周囲の 銀河や、数個の銀河からなる銀河群、銀河団などと吸収、衝突、合体を繰り返 す事によって成長していると考えられている。通常、衝突合体をしていないと 思われる銀河団はX線で見ると、銀河団の中心から対称に広がったX 線画像が 観測される。X線強度が最も強いのは銀河団の中心で、外側へ行くにつれX線強 度が弱くなって行くように見える。ところが、今まさに衝突をしている銀河団を X線で観測すると対称に広がっているようには見えず、X線強度のピークがいく つも見える、広がり方が楕円形になっている、などの様々な多様性を示す。

「あすか」以前の衛星による観測では、おもに、このX線画像の対称性が銀 河団衝突が起きているかどうかの指標とされてきた。しかし、「あすか」衛星 による観測は比較的対称なX線画像が観測されている銀河団でも、プラズマの 温度が一様ではなく、温度の高い所や低い所が存在する事を初めて明らかにし た。衝突合体が起きた場合、プラズマが圧縮されて温度が高くなる領域が生じ るためプラズマの温度が一様でなくなると考えられてきたが、X線画像が対称s なものについては、衝突が起こっていない、もしくは衝突が起こってから 非常に長い時間(20〜30億年以上)が経っていると思われていたために、 温度も一様になっていると考えられてきた。

図
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左上の図は「あすか」で観測された髪の毛座銀河団のX線画像を等高線で表した ものと「あすか」の観測で明らかにされた温度分布(カラー)を重ね合わせたも のである。X線画像(等高線)をみると球対称に近い構造に見えるが、温度分布 は非対称性が非常に強く見えている。温度が一様ではなく、温度分布が存在す る事から、この銀河団は衝突して10億年位しか経っていない銀河団であること が明らかになった。

同じような温度構造はへびつかい座銀河団でも見えている。(右上図)
このように「あすか」による観測は、X線画像や温度分布から、銀河団が衝突 してからの経過時間を推定する、という新たな手法の確立に非常に大きく 貢献し、この手法によって銀河団の衝突合体と銀河団の成長の研究が 現在も進んでいる。

参考文献

"Temperature Map of the Coma Cluster of Galaxies"
M. Watanabe, K. Yamashita, A. Furuzawa, H. Kunieda, Y. Tawara and H. Honda Astrophys. J., 527, (1999) 80

"Detection of a Temperature Structure in the Coma Cluster of Galaxies with ASCA"
H. Honda, M. Hirayama, M. Watanabe, H. Kunieda, Y. Tawara, K. Yamashita, T. Ohashi, J.P. Hughes and J.P. Henry,Astrophys. J. Lett., 473, L71-L74 (1996)

クーリングフロー銀河団とは?
銀河団は高温、低密度のガスで満たされていて、X線で明るい天体である。 X線で見た銀河団は、その表面輝度分布より球対称なものと非 球対称なものに大別される。球対称なものの中にはかみのけ座銀河団や へびつかい座銀河団のように大きなスケールで不均一な温度分布が存在する ことがこれまで明らかになっていて、それは銀河団本体にsubclusterが衝突し たときに発生した衝撃波によってガスが加熱されてできたと解釈されている。
それとは別に大きなスケールでの温度分布はなく、最近では大きな衝突合体を 経験せずに力学的に進化したと考えられる銀河団が存在する。そのような銀河 団の特徴は、中心部にハローを持つ巨大楕円銀河が存在し、中心に向かって温 度の減少や表面輝度の超過が見られていて、観測されている銀河団の半分以上 はこれにあたる。その特徴の解釈として、中心部で放射によってエネルギーが 失われ周辺部との間に圧力勾配が生じ、1年間あたり数百太陽質量のガスが中 心部に流れ込んでいるというのが有名である。したがってそれらの特徴を満たす 銀河団は俗にCF(cooling flow)銀河団と呼ばれる。しかし、X線以外の観測でその 冷却流を支持する観測的証拠は出てきておらず,冷却流の存在を否定した他の 解釈が存在するのが現状である。
CF銀河団の例として、下にASCAで観測された 銀河団2A0335+096の0.7-10.0keVのイメージと半径14分以内のスペクトルを示した。 イメ−ジを見ると、表面輝度分布(等高線)はほぼ球対称であるので力学的に十分 緩和している銀河団だと考えられる。半径14分以内のスペクトルにはプラズマ モデルがフィットしてあり、その結果、重元素の量が多く温度の低い銀河団で あることがわかった。低エネルギ−側には大きな残差を見てとることができ、 これは低温成分のライン放射によるもので、この銀河団のガスは1つの温度では 説明できないことを示している。我々はこの銀河団の鉄のアバンダンス分布を 詳細に調べ、その結果、半径6分以内において100kpcのスケ−ルでアバンダンス の高い領域〜0.8solarと低い領域〜0.3solarが存在することがわかった。 この解釈としては、先天的に分布している低アバンダンスのICMに、中心の巨大 楕円銀河や周辺部から落ち込み取り込まれた銀河群から高アバンダンスのガスが 後天的に供給されたというのが考えられる。
(田中武 日本天文学会 2001年秋季年会において発表)
図2
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